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『今徒然』 ~住職のひとこと~

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第10回 ~『如來』を訪ねて~

2021-05-01
 仏教には数多あまたの仏・菩薩たちがいましますが、仏と呼ばれるのは、『如來』のステージに到達したものだけです。観音様も、地蔵尊も、真の仏となるために修行中の仏弟子なのです。或いは、仏が菩薩に化身して、現世利益を施し給うとも云われています。今回は、その真の仏『如來』について、ご案内旁々、それらの仏像の特徴についてお話ししましょう。

 最初にご登場いただくのは、一切衆生の救いの教え、仏教の始まる基いとなった釈迦牟尼仏です。大聖釈尊とも、釈迦如來とも呼ばれます。施無畏印・与願印の像もありますが、多くは、結跏跌坐けっかふざして法界定印の印相を結んでいます。菩提樹下で、御悟りを開かれ、成仏得道し給うた瞬間を彷彿とするような尊い姿です。立ち入るべからざる禅定の厳かな佇まいを感じます。
修行者ブッタ・ゴーダマが、《覚者》として青蓮慈悲の眼根を開き給うた面持ちに深い感銘を覚ずにはいられません。
 
 日本仏教で、最も人気のあるのが、阿弥陀仏です。『極楽教主阿弥陀如来』とも呼ばれるように十万億刹の仏国土の彼方に極楽浄土を建設した、いわば極楽のオーナーです。殊に、『來迎らいこう仏』として人々の信仰を集めるのが、上品下生じょうぼんげしょうの印を結んだ阿弥陀如來です。最期臨終の時、観音・勢至両菩薩を伴い、聖衆とともに光を放って来迎し、念仏を称えるものを、摂取して極楽に引摂し給う。想像するに、それは"エレキトカル・パレード"のように華やかな人生最期にみる『夢』でしょうか。

 衆病悉除しゅうびょうしつじょの願いたのみありとされる薬師如來は、この時節に最も相応しいかもしれません。『東方教主薬師瑠璃光仏』とも『医王善逝ぜんぜい』とも呼ばれます。瑠璃(青色の宝石)光世界の教主として脇待に日光・月光菩薩を従え、憤怒の相をした十二神将の眷属けんぞく囲繞いにょうされた姿は、悪疫や災厄を降伏する青色に煌めく軍団であるかのようです。結跏跌坐して、右手を胸前に挙げ掌をこちらに向け、膝の上に置いた左手に薬壺やっこを持つ薬師如來は、薬石を介して衆生を済度せんとする清浄の仏です。

 大日如來は密教世界の教主です。五智如來の中心にあって宇宙世界を運用する根本仏です。東大寺大仏の毘盧遮那仏にも喩えられますが、ここでは『金剛界』の大日如來について、見てみましょう。他の如來が、螺髪らほつで修行僧のような弊衣であるのに対して、この仏だけは、結い上げた髪に宝冠を戴き、極彩色といわれる衣を纏い、優雅なネックレスやブレスレット、アームレットで飾り、左手の人差し指を立て右手でこれを覆って智拳印を結んでいます。ミステリアスで豪華な仏です。
 
 

 令和3年5月
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