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『今徒然』 ~住職のひとこと~

今徒然 記事 一覧

第1回 ~ 只今を生きる ~

2020-08-12
 禅宗で読誦される『修証義』の冒頭に「生を明らめ死をらむるは、仏家一大事の因縁なり」とあります。慧瑞禅師という禅僧は「一大事と申すは、今日只今の心なり」とさらりと云ってのけました。すなわち、生とは、死とは何かを明らかにするのは、今日只今此の時をおいて他にない、ということです。
 
 また、本願寺中興の祖、蓮如上人は『聞法』の心構えとして「仏法には明日ということはあるまじき」と説いています。仏弟子として、仏の教えを聞くチャンスは、今日此の時しかない、明日はあり得ないのだ、という意です。上人の火を吐くような信仰に、ほんの一瞬、触れたかのような気がします。
 
 ともすれば、私どもは、漠然と明日をおもい、明日に期待し、期待するからまた明日のことをいろいろ思い煩う。一心不乱に今なすべきことをなし、無我夢中で今日此の時を生きることに徹すれば、明日への不安や悩みも消えてなくなるのではないか。
 
 もしかして、今此の時の生き方に"人生の極意ごくい"みたいなものがあるんじゃなかろうか、ふとそんな思いを巡らす沙門それがし『今日只今の心』です。具縛底下ぐばくていげの身の上としては、さしあたって今日できることを明日にのばさぬよう心懸けたく存じます。
 
 
 萬霊ばんれいも 沸き立ちあがる 野辺の盆 / 丈 生
 
令和2年8月
 
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