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『今徒然』 ~住職のひとこと~

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第29回 ~二仏中間~

2022-12-01
 仏教では、釈尊の入滅後、弥勒菩薩みろくぼさつが出現するまでを、『二仏中間にぶつちゅうげん』といい、此の間、無仏の時代がつづくと云われています。未来仏弥勒菩薩が現れ給うのは五十数億年後と云われていますから、この無仏の時代はいわば永久につづくわけであり、私たちは、須らくこの無明の闇の中を生きねばならないわけです。有史以来、人類の歴史が常に災いと争いの繰り返しである所以でしょうか。しかも、今日只今此の時にも戦争が起きていることをおもんばかるにつけて、もしかして、弥勒菩薩が仏として出現されるのは、人類滅亡の時ではあるまいかと、あらぬ想像を巡らしたりします。

 らちもない話になりますが、地球の寿命があと五十億年と云われますから、弥勒菩薩が未来仏として降臨こうりんし給うみぎりには、既に地球は膨張する太陽に呑み込まれて消滅し、その遙か以前に人類は滅亡しているという笑えないジョークになります。紀元3000年以前に、人類は核戦争のホロコーストや生物兵器によるパンデミックで絶滅すると予測する科学者もいます。最終兵器を手に入れた人類は、人間としての想像力や感受性を失い、誇りも祈りも捨てて、自滅への途を突き進む。いわゆる《ハルマゲドン》より、いくらか信憑性しんぴょうせいのある科学的推論に基づいたストーリーでしょうか。

 因みに、新約聖書『ヨハネ黙示録』に見える《ハルマゲドン》は、もはや人智を超えた神とサタンの最終戦争の場所とされています。黙示録に於けるこの描写は、想像を超える醜悪と凄惨を窮めるため、世界の終末を予言するカルト宗教などに利用された例もあり、本来のキリスト教の姿とは懸け離れています。したがって、ここで詳述は控えますが、どんな宗教にも、解釈次第では、危険な破滅的教義になり得る可能性が潜んでいます。仏教の密教思想なども、迂闊うかつに深入りすると『怨霊調伏おんりょうちょうぶく』などの禍々まがまがしい呪詛とか『即身成仏』に名を借りた凶悪な暴力思想に繋がりかねません。

 さて、思い余ってあちこち迷い込んだようで、掲題の『二仏中間』の境に立ち戻りましょう。釈尊入滅後の仏が不在の間のアリバイと言っては、おそれ多いですが、仏に代わって、衆生を済度利益あさいどりやくするのが地蔵菩薩とされています。地蔵菩薩はまた閻魔えんま大王の垂迹すいじゃくとされ、六道能化地蔵菩薩として、二十八の功徳と七の利益をもって衆生を導き、救済します。人々の苦しみや悩みに寄り添うために、仏の化身として遣わされたのが地蔵尊なのですから、野辺でお地蔵様を見掛けたら、「オン・カカカ・ビサマエイ・ソワカ」と真言を唱え呼びかけてみましょう。仏のご加護があらんことを。


令和4年 12月1日
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